ワーク_仕事にアートを持ち込む

僕は美術館に行くのが好きだ。
アートに詳しくはないけれど、美術館に行くのが好きである。

最近そのようなアートの体験が日々の仕事にとても大事に思ったので、そんな話を。


朝、起きて、天気がよかったら、近所の美術館に行く。美術館で現物のアートをいくつかを見ていると、ついついテンションが上ってくる感じが好きだ。そして何十にひとつぐらい、つい足を止めて、長い時間見てしまう作品がある。自分がその作品をうまく消化できない「なんだろうこれ」感を味わうのが好きである。
そして「なんだろうこれ」感を味わった翌日の朝にある「なんだったんだろうあれ」って考え直す時間も好きだったりする。

このアート体験で自分に起こっている「なんだろう」は、自分が主体的に、自分の感性だけを頼りに作品に触れ、主観的に自分の感情が動くという体験なんだろうと思う。

なぜそのアートを見て何らかの感情が生まれたのか理由はよく分からないので「なぜ自分は、この絵に感情が動いたのだろう」という問いからはじまり、感情が動いた理由を考える。もちろん理由はよく分からない。
「構図なのか?色使いなのか、テーマらしきものなのか?」もしくは「作品が原因ではなく、自分のなかにある何か引っかかりみたいなもんとマッチしたのだろうか」みたいに、いくつかの「問い」が自分に生まれる。

僕がアートと言っているのは、作品を見て、自分に何らかの問いが生まれるかどうかである。アート作品を見て、自分の何かが触発され、思考が誘発され、問いが生まれるかどうかかが自分のアートの基準である。

ビジネスの話をしよう。ビジネスにアートはあまり介在しない。言語化できないことはビジネスの現場に入ってくることは少ない。
具体的に言うと、誰かの主観、誰かの思い込みのような、責任者が「なんとなく、このインターフェイスよくないと思う」という一言は、会議の多くを混乱させる(しますよね?)。


ビジネスの基本は、サイエンスである。
変数が明らかにされ、ロジックは解明され、再現性があるのかどうかが重要であり、論理的に整合性が保てているかどうかを問われることになる。

ビジネスは、本質的には誰かの困りごとか、ほしいことの解消かのいずれかからスタートする。
このやり方はビジネスモデルが屈強で、誰かのニーズが明確な場合(移動がしたい、大きな家に住みたい)は、強力な思考フレームワークなのだが、このフレームワークの弱点は、出てくる答えの多くが理性的であり、整合的であり、どうしても似たような解になることが多い。
現代のような変化の多い世界において、予測がしにくい環境では「人間って多分こう!」と強いスタンスが必要な場面が多い。

これがいわゆる仕事に感性(アート)を持ち込むべき理由だ。
「なんかわからないけど、人ってこんなのが嬉しいんじゃない?」っていう感性を議論に入れることで、議論の幅が出る。そしてその感性を会社にどのように組み入れるか?が本エントリーのテーマである。(説明が長い・・)

そのために大事なことは、ふたつあげてみたい。
まずひとつが「違和感」や主観的な「感性」を気軽に会議や日常で発信できる仕組みである。
会議で「根拠は?」とか「エビデンスあります?」ってなると、積極的に意見をしようという気に誰もならない。


だからこそ僕らでの仕組みでいえば、みんなが気軽に意見出来る場つくりとして「もやもや雑談」というチャットの部屋と、みんなで井戸場会議が出来るネット通話が常設してみた。
だれかが仕事をしていて、もやもやすることや、感覚的に何か思ったこと、例えば「あのISSUEについてモヤモヤするので、軽く話してもいいですか?」「あのUIについて雑談してもいいですか?」みたいな使い方である。

次に大事なことは、メンバーにお願いしているのは、何かを話すときに「主観」と「客観」をできるだけ切り分けて話してほしいとしている。

逆説的かもしれないけれども、議論すべき対象で何が「客観」でファクトがあって、何が主観で「こっちがいい」「この方が面白そう」みたいな感覚的な話なのか、切り分けて話した方が議論はしやすい、
そうしてくれると、聞いている人も、主観だから思うことを話し合うのね。みたいな共通の同意が場に共有される。

もちろん、こんな感じの感性領域の議論の多くは、最後はやっぱりどっちが良いか分からないみたいなところも多い、そんなときは、科学的なスタンスとして、カール・ポパーの「反証可能性」が開かれているかどうかをみていて、いったんはAとするけれども、お客さんのインタビューを通じて、Bとなったら元に戻してほしい。みたいな感じの後日の検証(反証)をして、とりあえず良いと思ったらやっちゃおう。の精神にしている。


変化が激しい社会だから、そうしていることもあるが、僕らが取り組んでいる課題そのものが、「こんな世の中の方が楽しいのでは?」という、思いっきり感性寄りの問いが始まりのサービスを作っている。
世の中の多くが便利にはなっているが、本当に人のキモチがアガるサービスってなんだろう?という問いが僕らの主要な問いである。

これからも、みんなが少しの引っ掛かりでも言葉にする、それに対してフランクに議論をする、そして検証して結果を見るというサイクルが回る仕組みにしたい。

あとそうそう、余談だけど、こういう議論は偶発のイベントも大事に感じる。
人はどうしても同じルーティンに陥ることことがある、そうすると意見が均質化し、同質化する。
そのために全然違う意見を取り入れることで、今までと違うインプットになり、それが刺激となって、新たな意見や考えが生まれることが多い。

僕の日常で例えるとアートなら自分が好きな作品だけに行かない。チケットショップに行って、前情報なしで、適当なチケットを買う。現代アートもあれば、陶磁もあれば、恐竜展だってある。そうすることで、黒田泰蔵の白磁のうつわと、ルネサンスの宗教画が繋がり、アートについて新たな認知(のようなもの)が生まれたりする。(たぶん)

そういわけで会社でも偶発性が生まれるような環境設計がとても大事に思ってて、社内の環境設計で、何とか偶発なる仕組み組み込みたいところである。(新たな試みは会社のリクルートサイトやブログで共有する予定。興味ある人がいればぜひ!)

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